シャーリィ・ジャクスンの短編小説を読んで

作家別感想

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※この記事はネタバレを含みます。

 

 

はじめに

先日シャーリィ・ジャクスンの短編小説を、英語版・日本語版ともにいろいろと読んだので、まとめたいと思います。

読んだ本(洋書)

The Lottery

The Daemon Lover

どちらもペンギンブックスという、イギリスの出版社が出している本です。ペンギンブックスの本はおしゃれな装丁のものが多く、手元に置いておきたくなります!どちらの本も、同じデザインシリーズのいろんな本が出ています。本当に素敵なので、ぜひサイトをチェックしてみてください。

読んだ本(訳書)

くじ

なんでもない一日

こちらへいらっしゃい

「なんでもない一日」は電子書籍があるのですが、「くじ」はありません(2026年4月現在)。多分シャーリィ・ジャクソンの短編作品では「くじ」が一番有名だと思うので、こちらも電子書籍が出てくれるといいんですけどね~・・・。

「こちらへいらっしゃい」はレア本ですので、入手するのは難しいかもしれません。(いやアマゾンで買えるのですが、いかんせん高価なので・・・)ただ訳文で読むにはこの本にしか載っていない作品もあるんですよね~!!

 

 

シャーリィ・ジャクスン短編小説索引 

それぞれの本にどの作品が載っているかも載せておきます。特定の作品が読みたいときに、参考にしていただければと思います。

The LotteryThe Daemon Loverくじなんでもない一日こちらへいらっしゃい
Nightmare〇
The Witch / 魔女〇〇
Mrs Spencer and the Oberons〇
The Renegate / 背教者〇〇
Mrs Anderson / アンダースン夫人〇〇
The Little House / 小さなわが家〇〇
The Tooth / 歯〇〇
Journey with a Lady / レディとの旅〇〇
The Order of Charlotte’s Going〇
The Daemon Lover / 魔性の恋人〇〇〇
One Ordinary Day, with Peanuts / なんでもない日にピーナッツを持って〇〇
The Very Strange House Next Door〇
The Lottery / くじ〇〇〇
Like Mother Used to Make / おふくろの味〇〇
When Things Get Dark / おつらいときには〇〇
Charles / チャールズ〇〇
Pillar of Salt / 塩の柱〇〇
Murder on Miss Lederer’s Birthday〇
Louisa, Please Come Home / ルイザよ、帰ってきておくれ〇〇
The Intoxicated / 酔い痴れて〇
Trial by Combat / 決闘裁判〇
The Villager / ヴィレッジの住人〇
After You, My Dear Alphonse / どうぞお先に、アルフォンズ殿〇
Afternoon in Linen / 麻服の午後〇
Dorothy and My Grandomother and the Sailors / ドロシーと祖母と水兵たち〇
Colloquy / 対話〇
A Fine Old Firm / 伝統あるりっぱな事務所〇
The Dummy / 人形と腹話術師〇
Seven Types of Ambiguity / 曖昧の七つの型〇
Come Dance with Me in Ireland / アイルランドにきて踊れ〇
Of Course / もちろん〇
Men with Their Big Shoes / 大きな靴の男たち〇
Got a Letter from Jimmy / ジミーからの手紙〇
The Honeymoon of Mrs. Smith (Version Ⅰ) / スミス夫人の蜜月(バージョン1)〇
The Honeymoon of Mrs. Smith (Version Ⅱ)The Mystery of the Murdered Bride / スミス夫人の蜜月(バージョン2)――新妻殺害のミステリー〇
The Good Wife / よき妻〇
The Mouse / ネズミ〇
Lovers Meeting / 逢瀬〇
The Story We Used to Tell / お決まりの話題〇
The Possibility of Evil / 悪の可能性〇
The Missing Girl / 行方不明の少女〇
A Great Voice Stilled / 偉大な声も静まりぬ〇
Summer Afternoon / 夏の日の午後〇
Lord of the Castle / 城の主〇
On the House / 店からのサービス〇
Little Old Lady in Great Needs / 貧しいおばあさん〇
Mrs. Melville Makes a Purchase / メルヴィル夫人の買い物〇
All She Said was Yes / 「はい」と一言〇
The Smoking Room / 喫煙室〇
Indians Live in Tents / インディアンはテントで暮らす〇
My Grandmother and the World of Cats / うちのおばあちゃんと猫たち〇
Party of Boys / 男の子たちのパーティ〇
Arch-Criminal / 不良少年〇
Maybe It was the Car / 車のせいかも〇
My Recollections of S. B. Fairchild / S・B・フェアチャイルドの思い出〇
Alone in a Den of Cubs / カブスカウトのデンで一人きり〇
Come Along with Me / こちらへいらっしゃい〇
Janice / ジャニス〇
Tootie in Peonage / 女奴隷トゥーティー〇
A Cauliflower in Her Hair / カリフラワーを髪に〇
I Know Who I Love / わが愛する人は〇
The Beautiful Stranger / 美しき新来者〇
The Summer People / 夏の終り〇
Island / 島〇
A Visit / ある訪問〇
The Rock / 岩〇
A Day in the Jungle / ジャングルの一日〇
Pajama Party / パジャマ・パーティー〇
The Bus / 夜のバス〇
Experience and Fiction / 体験と創作〇
The Night We All Had Grippe / 家じゅうが流感にかかった夜〇
Biography of a Story / ある短編小説伝〇
Notes for a Young Writer / 若き作家への提言〇

 

 

シャーリィ・ジャクスン短編小説 感想

作品数が多いので、いくつかをピックアップして感想を書きます。(ネタバレするのでお気をつけて!)

 

「The Lottery / くじ」

シャーリィ・ジャクスンの代表作のひとつ。慣習・習わし・しきたりの恐ろしさを書いた作品。

考えることってやっぱめんどくさいんですね。できればやりたくない。だから昔からあるもの、昔からの行いに疑問を投げかけることってしないんですよね。「くじ」はとても大げさな作品に見えますが、そんなことないと私は思います。昔からのしきたりとして、「毎年選ばれし一人をいけにえに捧げる儀式」が仮にもしあったら、たぶん人が亡くなることもとくに疑問に思わず、「だって昔からそうだから」で片づけてしまうと思います。

村の人たちはくじ引きに使われる黒い箱ですら変えようとしなかった。昔からあるものを変えることって、それだけ気合が必要だし、めんどくさいし、怖いんですよね。

 

The Daemon Lover / 魔性の恋人

シャーリィ・ジャクスンの作品の中でお気に入りのひとつです。一見ただの、婚約相手に逃げられた女性の話のようにも読めるけど、「そもそもジェームズ・ハリスなんていたのだろうか?」というミステリアスな雰囲気も感じます。彼女が付き合っていたのは悪魔のような男だったのか、あるいは本当に悪魔だったのか・・・。

周りの人間の底意地の悪さもピリピリと心を痛めつけます。シャーリィはこういった人間の、さらりと現れる意地悪さを書くのが本当に上手です。

 

Like Mother Used to Make / おふくろの味

これも好きな作品です。めちゃくちゃ不愉快な気持ちになる作品です(笑)。主人公のデーヴィッドは、決してぜいたくな暮らしはできないけれども、自分の住まいをなるべく居心地のいいものにしようとこだわっています。そんな彼の努力に好感が持てます。だからこそこの物語がキツイのです。彼と同じアパートに住む、このマーシャという女!よっぽど見栄っ張りなんでしょうか? 人の物、住まいを自分の物かのように振る舞うその姿には反吐が出ます!何も言えないデーヴィッドにももやもやしてしまうのですが。そもそもなぜこんな女にデーヴィッドは好意を寄せていたのか?まだ本性が見えていなかったのかな?でもなんとなく、これからも彼女とは付き合いを続けるような気がします。

最後にデーヴィッドは自分の住まいに帰れただろうか?もしかしたら住まいを交換したきり、ずっとそのままなのではないか・・・。そんな不安さえよぎってしまう作品です。

 

The Beautiful Stranger / 美しき新来者

出張から帰ってきた夫は、夫ではない男だった・・・。相手を不愉快にさせないように、万全の態勢を整えて、万全の態度と表情で対応したい。そう考える妻の気持ちが分かります(多分私の場合は完璧主義な性格のせい)。そういう細かい気づかいとか不機嫌になる人の心の動きとかがシャーリィの作品ではたくさん読めます。

ある日突然夫が別人になり、そしてまたある日突然自分の家が分からなくなる。変わらない日常に突然の変化が訪れる。怖いけど、少しそんな人生も憧れてしまうところがあります。

(ところで私、この作品を今回初めて読んだはずなのですが、昔どこかで読んだ記憶があるんですよね・・・どこでいつ読んだんだろう・・・)

 

The Summer People / 夏の終り

毎年決まって夏の間だけ滞在していた別荘に、もう少し長居してみようとした夫婦の話。田舎の住みにくさも感じたし、今まで知らなかった別荘の別の顔を見せられたような感じもしました。まるで別荘が「何言ってんだい、これが本当の姿だよ。アンタらが滞在している間はよそ行きの顔をしてるだけだよ」とでも言っているよう。

 

Island / 島

おばあさんとその付添人のお話。外から見たら、すっかりボケてしまったおばあさんだけど、そんなおばあさんには、彼女にしか見えない世界がある。年を取ってボケてしまっても、案外不幸ではないのかもしれない。

 

The Witch / 魔女

短いですがだいぶパンチの効いた作品。少年に嫌な話を吹き込む老人を、いつも頭の中でアンソニー・ホプキンスに演じてもらっています^^;(羊たちの沈黙の影響ですね笑) シャーリィの他作品にも出てくる特徴なのですが、子どもの純粋な残酷さも際立っています。

 

After You, My Dear Alphonse / どうぞお先に、アルフォンズ殿

これもシャーリィの作品にたまに見られるテーマですが、「善意の押し付け」が書かれています。「善意」の表現って難しいんですよね~。行きすぎちゃいけないし。見返りを求めるようになってはおしまいだし。この作品でも、黒人の少年ボイドに古着を渡そうとして、断られたウィルスン夫人がムッとしています。

善意を向けたときに思った通りの反応が返ってこないと、嫌な気持ちになるのは人間の性ですが、結局それは自分で勝手に相手に期待しちゃってる結果なんですよね。自分も経験があるので、それ以来バランスの良い善意を持つように心がけています。

そしてこの作品の中に含まれているもう一つのテーマは「偏見」でしょうね。黒人の少年を見たウィルスン夫人は、少年が黒人だから貧乏だと決めつけているんです。だからたくさん食べていいよだの、お母さんは何の仕事をしているのだの、古着を持って行けだのおせっかいを焼いてしまったんですね。子どもたちには偏見がないので、「なんで?」と疑問に思ってしまいますよね。

偏見をもった上での善意の押し付けなんですよね。すべての善意が美しいわけでもないっていうのがうかがえます。

 

Pajama Party / パジャマ・パーティー

なんかこの作品だけ異色!いつもの悪意が感じられない、と思ったのですが、どうやらシャーリィ自身の子どもたちもローリー、ジャニー、サリー、バリーというそうなので、この話はノンフィクションなのかもしれませんね。ずっと怖かったり嫌な気持ちになるような作品ばかり読んでいたので、シャーリィも普通の生活を営んでいたんだと思うと、ちょっとほっとする気持ちになります(4人の子どもを育てるのはさぞかし大変だったでしょうが・・・)。子供の頃から関係性が複雑な女の子たち・・・まあなんとおませな子どもたちですこと!

 

Louisa, Please Come Home / ルイザよ、帰ってきておくれ

なんだかゾッとする物語です。家出をするなら、もう帰る場所はないと覚悟しろという訓戒なのでしょうか?ルイザに出て行かれた家族は、彼女を探し続け、周りに慰められながらも悲しい日々を送る人生にある種の楽しさを感じていたのかもしれませんね。本当に求めていたのは、ルイザが帰ってくることではなく、「ルイザよ、帰ってきておくれ」と懇願を続けることだったのでしょう。

 

Seven Types of Ambiguity / 曖昧の七つの型

これもまぁ何とも言えない味わいの作品だこと^^;

舞台や雰囲気自体は素敵なんです。地下にあるクラシックな装いの本屋に中年の男女が本を注文しに来るという、シチュエーションだけみるといい雰囲気の話なのですが、さすがはシャーリィ・ジャクスン。「ん???」という盛大な違和感を最後にぶっこんできます。

中年の男性は、少年がずっと買いたいと思っていたエンプスンの「曖昧の七つの型」を買ってしまいます。もしかしかたら男性は、少年の気持ちを全くくみ取れない人なのかもしれません(実際そういう人もたくさんいますし)。それとももしかしたら、少年にプレゼントするつもりで買ったのかもしれません。そう考えるとこの話はとても美しくなるし、人が期待するようなエンディングになります。でもこれはシャーリィの作品ですからね!きっとそれはないです(笑)。嫌なのが、悪意を持って行われた行為なのか、それとも本当に思慮が浅く、無自覚で行われた行為なのかが分からないことですね。

 

The Tooth / 歯

夜行バスに乗っているときの、どこかフワフワとした感覚、寝ぼけ眼でSAに歩いていく時の、夢と現実のはざまを歩いているようなあの感覚。この作品からはそれが感じられますね。そこは物語の主要部分ではないかもしれませんが、自分が旅好きなせいなのか、こういう雰囲気に魅せられます。ジムという謎の男が作品をよりいっそうミステリアスにしています。

私も抜歯をしたことがあるので、その記憶がよみがえります・・・。抜歯後とても気分が悪くなってしまったので、辛い思い出です(笑)。

しかしクララはコーヒーを飲みすぎじゃないですか?バスの中で尿意をもよおさないか心配になりました^^;

 

まとめ

ここまで、シャーリィ・ジャクスンの短編小説についてご紹介いたしました。

シャーリィの作品は長編作品ももちろん素晴らしいのですが、忙しい毎日の中で長編小説を読むのってちょっと難しかったりもしますよね。短編小説の方は、15分もあれば読めてしまうような作品も多いので、毎日のすき間時間をちょっと彩るのにどうでしょうか?シャーリィの作品は「彩り」というよりは「スパイス」になってしまうと思いますが^^;

洋書の方も、あまり読みにくくはないです。割とシンプルな英語で書かれているし、複雑で長い文で書かれていることもあまりありません。以前読んだToni MorrisonのBelovedよりはよっぽど読みやすいです(「ビラヴド」訳書・洋書・映画の感想+お勉強)。TOEIC850点ほどあれば読めると思います。ぜひ読んでみてください!

また長編小説の方も機会がありましたら記事にしたいと思います。それでは~!

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