「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」という映画でヴァージニア・ウルフという存在を知ってから、ずっと彼女の作品を読みたいと思っていました。
(A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの記事についてはこちら↓)
A GHOST STORYを見て未練なしに逝きたいと思った話
今回やっと彼女の作品を読む機会があったので、感想をここに記します。
「青と緑」を読んで
ヴァージニア・ウルフの作品はかなり独特だと思います。
彼女は「意識の流れ」という手法を用いて作品を書きました。読んでみてそれがどんなものか何となく分かりました。要は「人間の思考」をそのまま書いている、そんな感じだと思いました。
本のストーリーとは違って、人間の考えってあっちへ行ったりこっちへ行ったりフラフラしますよね。
あ~寝違えて首が痛い・・・。おなか空いたな、あっ葉書をポストへ投函しなきゃ! みたいな。
そのフラフラした感じが、ウルフの「青と緑」から感じられました。
がっちりとした土台のストーリーがないような感じで、読んでいると、地に足を付けて歩けていないような感覚・空を飛んでいるような感覚がします。
読み終わった後に何も覚えていないような感じです。ストーリーが頭に入ってきません。そういう点で、とっつきにくい作品だと思いました。
でも確実に魅力はあります。
まず作品を通して、ウルフのお気に入りのもの(?)を感じ取ることができました。
作品タイトルにもなっている青と緑に始まり、光、ガラスの輝き、綺麗な花、砂糖、幽霊、蝸牛、ツグミなど。
すべての作品に、どこか静かな雰囲気がただよっています。そして本を読んでいるのに、まるでライブカメラを見ているような、あるいは絵画を眺めているような気持ちにさせられます。
小説には骨太なストーリーがないと!って思いながらウルフの作品を読むと、耐えられないと思います。意識の流れに身を任せて、一緒にフワフワしていると、あるときグッとウルフの世界に入り込める瞬間があると思います。それを経験すると、ウルフの作品がかなり好きになるのではないでしょうか?
マインドフルネスを行っているような、セラピー的効果があると思いました!
日々に疲れ、考えることに疲れた時に読みたい作品です。
以下に数点作品をピックアックして感想を記します。
乳母ラグトンのカーテン
楽しいお話。メルヘンチックで可愛らしい光景が思い浮かぶのに、内容はそこまで可愛らしくなく、むしろ少し殺伐としており、乳母ラグトンが女鬼と表現されている、このギャップが良い。
サーチライト
ハイドパークの緑と、夜になる直前の空の青、そこに差し込むサーチライトの光が印象的な作品。ウルフの作品によく見られる「ライブカメラで見ているような雰囲気」が、望遠鏡を使うことによって表現されている。
憑かれた家
みんなが寝静まった後にどこかでザワザワ言う音が聞こえてくるようなお話。家で不意になる謎の音を説明するかのようなお話。死者と生者が同じ建物内で共存し、お互いの存在に気づきながらも、敵対するでもなく、無視するでもなく、ちょうど良い距離で付き合っている。
キュー植物園
男女の恋愛や人間の交流という、儚く終わる短い出来事たちを、悠久の時が静かに包んでいる、そんな印象を受ける作品。ライブカメラで通り過ぎる人々や、蝸牛や花々の生活を眺めているよう。
壁の染み
壁の染みを見つけた語り手が、そこから前の絵画の持ち主や、なぜ染みができたのか、人間の愚かさ、人間が失っていくもの、歴史の話や自然の話などいろいろな考えを頭の中で繰り広げていくけれど、結局壁の染みは蝸牛でした、というお話。たぶん笑っていいと思う。しかしヴァージニア・ウルフはひとつのものを見てこれほど考えを広げる人だったのでしょうか?だからこそ小説家になれるのかもしれませんね。
「灯台へ」を読んで
こちらは長編小説。ですが描かれているのはたった2日間だけ。灯台へ行こうとしていた日と、実際に灯台へ行った日。そしてその間には長い時間が経っています。
こちらも「意識の流れ」の手法が採用されており、さまざまな登場人物の思考が詳細に書かれています。短編小説同様、ストーリーはあるようで無く、物語よりも登場人物の意識に重点を置いているような作品です。
誰か一人にフォーカスして内面の告白が書かれているわけではなく、いろんな人の内面に転々とフォーカスしていきます。まるで読者が登場人物の魂に次々と入り込んでいくような、そんな感覚に陥ります。
みんながみんな、他の人にちょっと嫌な感情を持っていたりするんですが、ほんの少しの会話や言動などを見て、すぐに嫌悪感が消えたり、やっぱりいい人ね、と思ったりします。その点ではちょっとホンワカする小説です。
ただ、やはり全体的な印象としては、「とっつきにくい」という感じを抱きました。それは、私がストーリーを重視した小説を読むことに慣れすぎてしまっているからだと思います。こういった「意識の流れ」を重視した小説にもっと慣れれば、すんなりと受け入れられるようになるのかもしれません。
少し変わった実験的な小説を読みたい方におすすめです。


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