A GHOST STORYを見て未練なしに逝きたいと思った話

映画

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー を観ました。

原題:A Ghost Story / 舞台:アメリカ / 製作年:2017 / 言語:英語

個人の観点から自由に感想を書きます。ネタバレもしますのでご注意を!

 

さてこの映画、私はとっても好きで、たまに観返したくなります。

ゴースト・ストーリーとありますがホラーじゃないです。ご安心を。ただちょっとホラーだぞ!みたいな演出を挟んでくることがあるので、怖い~!って気持ちで観ているとビビることもあるかもしれません(笑)。

とっても長回しで撮られていたり、静かだったりするので人によっては眠くなっちゃうかもしれませんね。私も疲れている日は観ながら寝ちゃうと思います。たっぷり眠ってから本作鑑賞に臨みましょう!

交通事故に遭い、幽霊(しかも本当におなじみの恰好の幽霊、というよりお化け?!)となってしまったカップルの男性「C(という名前になっています)」。彼が家に帰ってきて、ただそこに突っ立っている・・・。その様子が悲しくも、なんとも美しい・・・。芸術作品を見ているようです。こんな絵画が本当にどこかにありそうです。

画面のアスペクト比も、1.33:1の、スタンダードサイズ(サイレント映画時代の比率)になっています。四隅は丸くなっていて、まるで昔のテレビを見ているかのような感覚を抱かせます。なんとなく見ていて安心感を覚えます。

幽霊となってしまったCは、恋人Mの様子を見守るばかり。触っても、もう何も伝わらないんですね。どうしようもないながらもただひたすらそばにいる様子に、心がきゅっとなります。

Mが新しい男を連れて来たときに、嫉妬でホラー要素が出てきてしまったのが、ごめんなさい、ちょっと面白かったです(笑)。C的にはまだ早かったのかな?きっとMも悲しさを埋めようと彼女なりに必死だったんだよ・・・。

映画としては短めですが、ストーリー内では非常に長い時間が過ぎていました。生きている人にとっては長い時間、と言った方が正しいのかも。Mも引っ越しを決めて、少しずつですが悲しみを乗り越えようとしている様子でした。ただ死んでいる人は、未練や執着がある限り、ずっと先に進む(成仏する)ことはできない・・・。

ご近所の幽霊さんに会うシーンがありましたよね。「ここで人を待ってる」というご近所さんに、「誰のことを?」と尋ねると、「覚えてない」との返事が。ぞっとしてしまいました。「会いたい」という気持ちだけが強く残って、「誰に」なのかは忘れてしまう。未練ってそうやってベッタリと染みついて、離れられなくなってしまうのね・・・。

この映画で登場した幽霊さんたちはみんないわゆる「地縛霊」ですね。未練のある場所からいつまで経っても動けない。地縛霊という概念は海外にもあるのかしら?また調べてみます。

この映画をさらに面白くしているのが、タイムリープ要素ですよね。柱の隙間に隠されたメモを見ることが叶わず、住処であった家も取り壊されてしまったCの幽霊は、幽霊としての一生を終えようと(?)、高層ビルから飛び降りますが、亡くなる代わりに過去にタイムスリップします。なぜあの時代に戻ったのかな?と思ったのですが、もしかしたら家ができる時だったからかもしれません。C自身が家の歴史の一部になっていたのかもしれませんね。

そこからまた長い時を経て、ついにCの幽霊は、生前の彼自身とMが引っ越してきた時代にたどり着きます。ここで映画序盤の伏線が回収されるんですね!「この家、変な音がするよね」といったセリフや、寝ているときの物音、もしかしたらあのぼや―っとした光とかもそうだったのかも。まさかCはそれらが自分の霊のしわざだったとは思わなかったことでしょう。でもなぜかこの家から引っ越したくないといった気持ちがあったのは、潜在的に自分の幽霊(魂)とつながっていたからなのでしょう。

Cの幽霊はタイムリープして、生前の自分に気づいたわけですが、これも何十回、何百回とリープしているうちに、自分の姿すら忘れてしまうのではないのかな、と思いました。死んだらみんな白いシーツを被っただけの見た目になってしまう。ご近所さん幽霊のように、誰を待っていたかも忘れてしまう。自分のことも、大切な人のことも忘れ、ただ「想い」だけに引き止められる・・・。とっても怖いです。そんな風になりたくないよ~。

 

メモに残された言葉は?

映画のラスト、タイムリープして、Mのもとに再び戻ってきたCの幽霊。柱の隙間からメモを取り出し、それを見たことでやっと姿を消す(成仏?)ことができました。未練、心残りが消えたということなんでしょうね。

きっとCは、メモに何が書かれているか、それが気になって気になって仕方なかったのでしょう。だから実際に書かれていたことが大したことじゃなくても、関係ない。ぶっちゃけ内容はどうでもよく、ただ何が書いてあるかを確かめる、その行為をすることに意味があったのでしょう。

そう思っても、やはり何が書いてあったのか気になってしまう。そしてきっと答えはないのだろうと分かっていても、サーチしてしまう(笑)。これも人間の性ですね。

調べてみるとやはり同じような疑問を持った人はいたようで、米国掲示板サイト「Reddit」にスレッドがありました。そこでひとつ気になったコメントがありましたので、ご紹介します。

I don’t think I’ve seen this mentioned anywhere yet, but I think the note possibly says, “the treasure yours.”

Here is why:

In a scene shortly before the woman leaves the note, the ghost knocks over a bunch of books from her bookshelf. One of those books is A Haunted House by Virginia Woolf.

出典:A Ghost Story (2017) – What’s written in the note at the end? : r/A24

メモには「The Treasure yours(宝物は あなたたちのもの)」と書かれているんじゃないかとのこと。

なるほど、確かにCが本を落としたときに書かれていましたよね。故意にあのページを開けていた気もしますし・・・。

あの本は、Virginia Woolf(ヴァージニア・ウルフ)のA Haunted House(憑かれた家)という作品だそう。

そういえば、映画の冒頭で引用されていた文も、この小説からでした。

Whatever hour you woke there was a door shutting.

出典:“A Haunted House” by Virginia Woolf (full text)

「目覚めた時にいつも 扉が閉まる気配がする」

パブリックドメインになっているようですので、インターネットで原文を読むことができます。短編小説のようですので、すぐに読めそうです。

日本語版はこちらにありました。


ヴァージニア・ウルフという著者を存じなかったので、読んでみます。

Cの力で棚から落ちた本たち。他に落ちた本で、確認できる作品はこの2作品でした。

Love in the Time of Cholera(コレラの時代の愛 著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス)

A Farewell to Arms(武器よさらば 著者:アーネスト・ヘミングウェイ)

前者は愛した女性を50年以上も待ち続けた話、後者は戦争時代に幸せを求めた男女だが、死によって分かたれるという話。どちらも本作につながるものがあるように思います。やはり選んでるのかな~!こういう細かいところを見るのが楽しいですよね。

 

さて、なんとか最後成仏できたCでしたが、タイムリープしたときにもう一人のCの幽霊もいましたよね(^^;

彼は一人が成仏した時に一緒に成仏できたのだろうか? はたまた彼もタイムリープの上でやっと成仏できるのだろうか??

美しい映像や詩的な内容を楽しめる映画ですが、未練を残して死ぬと怖いな~~ってしみじみと思わされた映画でした!さっと成仏したいぜ!

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