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実は多くの人が知らないうちに彼の作品に触れている・・・。今回は有名なドイツ文学作家、ヘルマン・ヘッセの作品を読んだ感想を記していきます。
ヘルマン・ヘッセを読んで
少年の日の思い出
この作品、記憶がない方でも読んでいる可能性が高いです。長い年月、中学校の国語の教科書に採用されている作品だからです。
エーミール、チョウの標本、「そうか、そうか、つまり君は・・・」という有名なセリフ。これを聞けばなんとなーく読んだことがあるかも、と思う方もいるのではないでしょうか?
私がまさにそんな感じで、うっすらと読んだ記憶だけはあり、しかし内容は全く覚えていなかったので、今回読み返すことにしました。
読んでみてまず思い出したのが、学生の頃はチョウの収集なんてものに全く興味がなかったということでした。あの頃はこの作品を読んでも、わぁ~やってみたいとは全く思いませんでした。むしろ今の方が興味があります。ただチョウを殺すという工程を考えると、なかなかやろう!と決心もつかないのですが・・・。
作中の私の友人(ぼく)がしたことはもちろん良くないことなんですが、他の子が持っている良いものをどうしても欲しい!と羨望のまなざしで見る様子はいかにも正常な子どもです。むしろエーミールの方が、妙に大人っぽく斜に構えた様子で、なんかかわいくないですね^^; これもたぶん学生の頃は思わなかったことでしょう。むしろ子供の頃は「ただただ被害者なエーミールかわいそう」と思っていたと思います。まあそれはそうなんですが・・・。
子供の頃の思い出って、やっぱり楽しい思い出よりも苦い思い出の方が痛烈に残るんですね。喧嘩は多いかもしれないけど、作中のこれは「拒絶」で、それを子供の頃に経験するのってなかなかないと思います。「ぼく」は大人になった今でも、チョウを見るたびにその記憶が頭をよぎるのでしょう。大人になるってたくさんの傷とともに生きていくことなんですね。
久しぶりにこの作品を読んでみよう、と思った方。有名な「そうか、そうか、つまり君は・・・」の訳で読みたいなら、高橋健二訳の作品を選んでください。以下に紹介する本に、彼の訳の作品が載っています。
車輪の下で
おおう・・・これはけっこうずっしりとくるお話でした。「少年の日の思い出」の方も、少年の頃心に傷を負った話ではありますが、こちらはもっと深刻です。
解説を読むと、この作品はヘッセの自伝的要素が強いそうです。自身がそれだけ成長の過程で辛い思いをしたのでしょう。ハンスと同じように、周りの大人たちが強くヘッセの将来に期待したのかもしれません。
ヘッセの教育批判は、自身が受けた経験によって生まれた思考でしょう。私はヘッセのように期待されもせず、がむしゃらに勉強をした経験もないからでしょうが、教育制度そのものにそこまで批判的な考えは持っていません。子供たちが勉強が好き、または勉強した末に良い未来が待っていると信じて、勉強するのは良いことだ、プラスになると思って望むなら、それは良いことだと思います。
ただこの作品内で問題だったのは、ハンス自身の意思が全く尊重されていなかったことだと思います。
ハンスも少年の時点ですでにやりたいことなんて決まってはいなかったでしょうが、大人たちが無理やりレールを敷いて子供の将来を勝手に決めるなんて、悲しいことです。勉強しか選択肢がなく、怯えるように勉強に追われる様子は読んでいて辛いものがありました。
ハンスの運命を大きく変えたきっかけに、ハイルナーの存在があります。ハイルナーの存在はハンスにとって「悪」だったのか?私は必ずしもそうとは思いません。ハイルナーのその後は書かれていませんが、彼だってそれなりに職を見つけて生きていったのでは?
教育なんてものに価値を見出さず、自由奔放に生きたハイルナー。ハンスは彼との関わりを通じて、そんな生き方もあるのだと学びます。でもそんな生き方は間違いだと、幼い頃から大人たちに無意識のうちに植え付けられてしまっていたから、余計に自分がみじめに思えたのではないでしょうか?
機械工だって立派な仕事だし、失恋の痛手だって時間が経てば忘れられたはず。でもそんな風になるにはハンスは繊細すぎたし、すでに大人たちに洗脳されすぎていたのだと思います。
いくつもの不運が重なってあのような結末になってしまったのだと思います。ヘッセはもしかしたら、「下手をすれば私の人生もこうなっていた」と思って書いたのではないか、と思いました。不幸の連鎖が雪崩のようにあったけれど、ヘッセはどこかで踏みとどまれたのではないでしょうか?そして「ここで踏みとどまれなかったら、もう終わりだっただろう」と痛感した瞬間があったのではないでしょうか?・・・あくまで私の想像ですが、考えると恐ろしいものがあります。
作者の経験が濃縮されているような濃さがありましたし、ヘッセ自身の文才、そして松永美穂氏の翻訳の上手さもあるのでしょうが、文章が巧みで面白く、ぐいぐい引き込まれて読めました。


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