レイモンド・カーヴァーを読んで

作家別感想

※この記事は広告を含みます。

 

短編小説の名手として知られるレイモンド・カーヴァーの作品を読みました。以下に感想を記します。

「Carver’s Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選」および「Where I’m Calling From: Selected Stories」を読んで

今回私が読んだ作品集はこの2冊です。

レイモンド・カーヴァーは以前にも読んだことがあり、「Nobody Said Anything」と「So Much Water So Close to Home」が好きということは分かっていたので、その2作と代表作の「Cathedral」の和訳が読めるように、上の村上春樹訳の作品集を読みました。

 

改めて作品集を読んでみて、レイモンド・カーヴァーの作品は”日常”を書いたものが多いな、と思いました。死体を発見したり、突然息子を無くしたりなどの事件があったとしても、あくまでも書かれているのは日常であるといった印象を抱きました。また、日常と言ってもあまり幸せ満点な日常ではなく、どこか沈みかけている、あるいは沈み切っている生活の中での、ちょっとしたできごとなどが書かれていることが多いなと思いました。

男女がぐだぐだ話していたり、電話をするシーン、お酒を飲むシーンが多いですね。離婚している登場人物も多い。こうやってみると、レイモンド・カーヴァーの人生が作品に大きく反映されているのだろうなと思います。そういった人生の普遍的な悩みについて書かれている作品だったり、人がそれぞれに悩みを抱きながらもぐだぐだしゃべるみたいな雰囲気が好きな人は、レイモンド・カーヴァーの世界観にハマるかもしれません。

私はどちらかというとそういった作品よりも、理解されない悲しみや絶望感が強めの印象で書かれている作品が好きなので、やはり「Nobody Said Anthing(サマー・スティールヘッド/夏にじます)」や「So Much Water So Close to Home(足もとに流れる深い川)」が好きでしたね。「Why Don’t You Dance?(ダンスしないか?)」も独特の哀愁があって良かったです。

「Nobody Said Anthing(サマー・スティールヘッド/夏にじます)」は、子供の頃自分もこういった体験をしたことがあったから心にグッときました。こういう体験をしたことがないという方がもしいましたら、かなり大切に育てられたのだと思いますよ。でもこういった経験を通して、子供は自分の中だけで繰り広げられる夢の世界からだんだんと外の世界があることを知り、自分が作り出すワンダーな世界で他人と一緒に暮らすことはできないのだと気づき、いわゆる「空気の読める」大人になっていくのだと思います。だから成長するにあたって必要な経験なのかもしれませんが、それでも、純粋な子どもたちにこの絶望の瞬間が訪れるのは悲しいものです。

「So Much Water So Close to Home(足もとに流れる深い川)」は、男女の考え方の違いが書かれていました。他社には無関心な夫と、母であるがゆえに他人の子供にも深く共感する妻。体の接触があればトラブルは解決すると考える男と、その考えをむしろ不誠実に感じる女。どうしてこうも男女は正反対なのでしょうか(まあ当然これはステレオタイプで、みんなが一概にそうとは言えませんが)。

また一部の男性が持つ無意識の加害性も書かれていました。そして常にそれに警戒しなければいけないが故に、本当の優しさがその中にあったとしてもそれを受け取れない妻。私は女性なので、この妻の気持ちはよく分かります。過去に何かしら男性に怖い思いをさせられた女性は、常に自分を守っていなければいけないのです。男性の方、もし女性に思いやりを持って接していたのに無下にされたという経験があったら、女性側にこういった怖い経験があったのだろうと、理解してやってください。

男女は理解し合えないのかと沈んだ気持ちになりますが、この作品の一番の素晴らしい点は、男性であるレイモンド・カーヴァーがこれだけリアルな女性視点の作品を書いたという事実ですね。これだけ女性のことを理解している男性がいる、ならば同じくらい男性のことを理解している女性もいるでしょう。お互いの特質を理解して、歩み寄ることが大切なのでしょうね。

しかしレイモンド・カーヴァーの作品は、登場人物の見た目についての説明があまりないんですよね。基本作品って読んでいけばその人の見た目の描写が出てきて、それでその人の見た目を想像することができます。何歳かとかブロンドとか黒髪とか、ショートヘアとか背が低いとか。でもそれがレイモンド・カーヴァーの作品ではできません。黒人か白人かも分かりません。2組のカップルとか出てくるともうわけ分からなくなります(笑)。英語の名前もメジャーなものならいいですが、なじみのない名前が出てくると男性か女性かすら分からなくなります。だから代名詞(HeかShe)で判断しなければいけなくなります^^; まあこれは英語勉強中の私だからこその悩みかもしれません。

でも、登場人物の見た目を詳細に説明しないのは、どんな人物にでも想像できるようにしてあるのかな、とも思いました。様々な出自を持った人々が自分たちの物語として読めるように、作品に幅を持たせるようにしたのかな、と。

コメント

タイトルとURLをコピーしました